「やだっ!」

ゴンッ

土屋の拳があたったのは、男の顔ではなく、真理の横頭だった。

真理は……とっさに男をかばったのだ。

真理と男は一緒になって倒れこんだ。

「……………」

(何でだよ……)

真理に手を差し伸べながらも、震えが止まらなかった。

「……そんなに、そいつが、好きなのかよ!!」

「………え?え??」

男は困惑していた。

「好きよ!!」

「…………!」

「大好き!愛してる!!」

真理の気持ちを知って、土屋は愕然とした。

「…………なんだよ」

「……………」

「何なんだよ……俺が、ずっと大事にしてきたのに!こんな……ハゲ果てた奴に持ってかれんのかよ!!」

気持ちが堪えきれなくなり、近くに立っていた電柱を蹴り上げた。

「おとうさん?」

幼い声が聞こえた。

振り返ると、小学生くらいの女の子が男に駆け寄っていた。

「おとうさん?………て、瑠璃ちゃん?!」

よく見ると、その少女は真理の妹の瑠璃だった。

「え……?おとうさ……?」

(どうゆうこと?)