「じゃ」

聖也は階段を下っていった。

「帰るか?」

「いや…授業、受けるよ。担任から、進級やばいって言われたし」

「そう……」

直人は黙って聖也の後に続いた。

教室に戻ると、生活指導の小椋がカンカンになって教壇に立っていた。

先ほど、ないがしろにされていた生物教師が呼び出していたらしい。

「いま、キノとりょうが呼び出されてるって」

「別にキノ悪くねーのにな」

ヒノケンと土屋は保健室でグチっていた。

「つまり……広瀬さんと木下くん……つきあうんだよね?」

「らぴーよ」

ヒノケンは嬉しそうに答えた。


「失礼しまーす」

そう言って保健室に入ってきたのは、バレー部の西田だった。

「おす」

「ん…」

ヒノケンが軽く会釈すると、西田はぎこちなく答えた。

ちぃとの一件以来、二人は和解もせず、気まずいままだった。

「どうしたの?西田くん」

「すいません、頭痛薬もらえますか?」

「いいけど……大丈夫?」

伊澄は薬棚を開けて、西田の様子をうかがった。

「はい……試合前は、いつもなんで」

「デリケートなんだな」

「ははっ」

土屋の言葉にヒノケンは軽く笑った。

「はい」

「ありがとうございます」