「……………」

トイレの中で息をひそめて、りょうの足音が通り過ぎるのを確認してからそっと扉を開けた。

「!!」

しかし、扉を開けた二人の前に、りょうがいた。

さっきの足音は、別の生徒が走ってゆく音だったらしい。

「いや、つ、連れション……」

聞かれてもないのに、ヒノケンはもごもご言い訳をした。

「…今日、日和いる?」

「……あ、いるよ」

二人に驚かず、りょうは冷静に聞いてきた。

それが逆に怖い。

「…………」

そのままフイ、と横を向いて通り過ぎていった。

「な………なに?」

いつになく冷静でいるりょうに、ヒノケンは混乱している。

「あいつ、キノのとこ行くのかも」

二人はりょうの後についていった。

りょうは土屋たちのクラスの扉の前で立ち止まっていた。

「ほら。やっぱ俺らのクラスじゃん」

「いま、授業中だぞ。どーすんだよ」

りょうは何の躊躇もなく、授業中の教室のドアを開けて叫んだ。

「日和ー、どこ!?」

「げ、あいつマジかよ?!」

ヒノケンは教室に飛び込もうとしたが、土屋に止められた。

「も少し、様子を見よ…」