(へ……?)

「まーとりあえず、送ってくよ」

駅に向かっていく背中を、伊澄は複雑な気持ちで見つめた。

(好き……勘違い?)

「ん?どうした?」

思わず、立ち尽くしたままだった。

「勘違い…?」

「ああ、そのこと」

独り言のように口から放ったのに、直人の耳は拾ってしまった。

「あ…その」

「なんかさ、次は年上と付き合ってみたいとか前に言ったから…真に受けたみたい」

「そう……なんだ」

重くなっていた足が、やっと動いてくれた。


ここでこのまま立ち止まっていても収拾がつかないのを、やっと両足は理解してくれたらしい。


「……………」

二人は、ずっと無言だった。

(私……ばかみたい)

年下の男が自分の事好きかも…なんて、一人で浮かれて沈んで……

全部自分の一人相撲だ。

虚しすぎる。