「…………?」


キスをされるのかと思ったが、聖也の唇は触れなかった。



おでこの上にふと手がかすめる感触がして目を開けた。

「前髪、じゃま」


聖也はフッと笑って岬の前髪をたくし上げていた。

「ひどい(笑)」

次の瞬間、聖也は岬の唇に触れるか触れないかのキスを落とした。


キスなんて、何度も経験があるから慣れているはずなのに、何故かこんな中途半端なキスになってしまった。





「……………」


「もいっかい」

今度は、ちゃんとしたキスをした。








「やべーな、あいつら…血、出てるじゃん」

中村はチンピラ同士のケンカに見入っていた。

「なぁ…直人」

「…………………」

隣で立っている直人に声をかけたが、直人は無反応で全く違う方向を見て、立ちすくんでいた。

「おい、直人?」

直人の視線の先には、岬と聖也らしき二人が、キスをしている姿があった。