「やだ…何あれ」

迷惑そうな顔の岬の肩に手をまわして、少し強引に後ろを向かせた。

「あっち行くぞ」

チンピラ二人は聖也たちの駅までのルートをふさいでいたが、なるべく関わりたくないので裏から遠回りしていくことにした。

「うん……」

「岬」

「なに?」

聖也は岬の顔を見ずに続けた。



「俺の本命…伊澄ちゃんじゃないから」



「………だれ?」

岬の声は震えていた。



「わかってんだろ」


人目につかないビルの入り口に岬を連れ込んだ。

「せい……」

「わかってんだろ」

岬は涙目だったが、聖也はもう一度言った。




「………どうすればいいか、わかんねーよ」



「聖也……」



聖也はすがるように岬の肩に顔をうずめた。



「私も……」



「………?」




「私も………わかんねー……もん」



聖也は黙って岬の唇に自分のを近づけた。


岬は目をつむった。