りょうはそんな嫌みな聖夜にイーっとして見せた。

ウ゛ー…ウ゛ー…

誰かのケータイのバイブ音が鳴った。

机の中で震えているのか、ガタガタと机が揺れる音もする。

その音はすぐに消えたが、よりによって小椋の前で鳴ってしまったという事実は消えなかった。

「何だ…今の音は?!」

静かな教室の中で、小椋の怒声はよく響いた。


ちなみに校則では、最近は物騒ということもあり、学校へケータイの持ち込みは許可されているものの、校内でのケータイの使用は厳禁だった。


つまり、ケータイの電源をつけていいのは登下校時のみという事だ。

「……………」

「この辺から…聞こえたな」

小椋はりょうの席のすぐ前で立ち尽くした。

「お前だろ」

「はっ?!違うし!!」

一方的な決めつけに、りょうはすぐに否定した。

「何だその口の聞き方は!!ケータイを出せ」

「…嫌です」

「ふざけんな!!お前の出さねーならこのクラス全員のケータイ没収する」

一人を落とすためなら他の何十人を平気で人質にする容赦のなさが小椋の持ち味だ。

「…………っだから、違うって」

「出席順に前に提出しろ」

そう言い放って小椋は名簿を読み上げようとした。

「……わかったよ」