『体、気をつけてな』

｢……うん｣

そう交わしたあと、受話器を切った。

｢……………｣

ケータイをカバンに仕舞おうとしたら、また震えだした。

｢………？｣

液晶を見ると、相手は聖也だった。

｢はいっ……｣

『……………』

相手は無言だ。

｢………？もしもし？｣

『もしもし』

｢どうしたの？｣

『……何か、声が聞きたくなったから』

岬は思わず吹き出した。

｢さっき、会ってたじゃん(笑)｣

『なのにね。俺、彩香とつき合ってる時もこんな感じだったな』

｢こんな感じ…？｣

聖也の言葉に、一人首を傾げる。

『俺、デートの後でもよく電話してきたじゃん』

｢あー……そういえば…｣

聖也は、よく電話をかけてきた気がする。"間違えたー"とか、"俺のライター持ってってない？"とか……。

『いろいろ言ってたけど、あれほとんど嘘だった』

｢へ？｣

『彩香の声が聞きたかったけど、照れくさいから毎回電話かける口実考えてた』