「………っ……」

岬はしばらくその場で泣き続けた。

涙が頬を伝う前に、濡れタオルで顔を拭いた。

周りの視線なんてどうでもよかった。

「…………」

…ブー、ブー……

ケータイのバイブ音がした。

慌ててとると、着信は直人からだった。

急いでレジに向かい、お金を払って外に出た。

ケータイを見ると、お留守番サービスに接続されていた。

通話ボタンを押す。

「もしもし………」

『あ、岬?』

「……うん」

何となく辺りを見渡しながら答えた。

『あのさ、聖也から電話きた?』

「あ、うん……」

電話の向こうで直人はため息をついていた。

『そっか…今、どこ』

「いま…駅前の喫茶店……なんで?」


『聖也がさ、学校いなくてさ。電話しても出ないし…また何かあったのかと思って』

会っていた……とは言えなかった。


直人は、大事な友達の一人だけど………。



怖い。正しいから。


何の覚悟もなく妊娠して、その上捨てられたとも言えなかった。

きっと、言ったら軽蔑される。

「いや……」

『ま、いっか。いきなり悪かった』

「別に……いいよ」