「おっ、聖也久しぶりじゃん」

「よー中村」

廊下で聖也に声をかけてきたのは、隣のクラスの中村だった。

「しばらく見なかったけど……学校きてた?」

「んーん。休んでた(笑)」

「やっぱり(笑)………あ!聖也。今日の夜あいてる?」

中村はケータイをいじりながら思いついたように言った。

「何かあんの?」

「牧田たちとボーリング行くけど…来る?」


「あー……今日は…」

少し言いづらくて、言葉を濁した。

「バイト?」

「いや……バイトは…」

岬の妊娠を知った翌日、徹夜で飲みあかした体で出勤したが、途中でひどい頭痛が起きて早退した。

店長とバイトの真衣さんはとても心配していた。

あれから出勤はしていない。

(……もークビかな)

「あ、美緒ちゃんか」
中村はバイトじゃないならデートかと思ったらしい。

「いや……美緒は」

「えっ、別れたの?」

「別れてはないけど……」

美緒とも、全然会っていない。

着信があっても出なくなった。