「もともと…人に好かれる性格じゃないけど、たまに、ヒノケンみたいな人がいるから……自分の人生捨てたもんじゃないかなって。もう少しここで頑張ってみようかなって……」

「ちぃ」

ちぃが、そこまで思ってくれているとは思わなかった。

自分としては自分のしたいようにしているだけだったし。


「転校、すんの?」

「……………」

「ちぃがいねーと…寂しいじゃん、俺」

それはちぃを引き止める言葉ではなく、本心だった。



「私もだよ……」

「……………行くの?」

ちぃは黙って頷いた。


二人はそのまま丘の上で沈んでいく夕陽を眺めていた。


ヒノケンは、ちぃを引き止めることはできなかった。

ちぃの限界…。

よく耐えた方だと思った。

西田がちぃに少しでも弁解してくれるならいいと思うが、今日の態度を見て西田は反省していないようだし……無理やり謝らせても、ちぃは多分複雑な気分になるだけだと思った。

(俺は……結局……)

「ヒノケンには、電報送るから」

「……手紙とか、メールでいいだろ」

(何も……出来なかったんだな)