「先生、ベッドあいとる?」

「…どうしたの?」

「生理痛」


広瀬りょう

数少ない工業高校の女子の一人で、直人たちの隣のクラスだ。身長は結構低めで今日は体調が悪いせいか、いつものギャルメイクはしてなかった。3年の先輩と付き合ってるらしい。関西弁の元気な女の子だ。

引き出しから保健記録を取り出し、りょうに手渡した。

「じゃ、これにクラスと名前と理由書いて」

「あいあ~い!」

(…元気じゃん)

書き終えたりょうを奥のベッドに誘導し、またぐったりとイスに座った。

しばらくすると、奥のベッドからひそひそ声が聞こえる。

「うん、ごめん体調悪くて…うん、生理痛…めっちゃ痛い…見舞いきてー」

明らかにケータイで通話しているのがわかったが、今の伊澄にはどうでもよかった。


「はぁ…」

(1年半ぶりの彼氏だったのに…)


(あんなアホだったなんて……)

金曜日の夜に別れて土日を過ごしたけれど、向こうから連絡はない。する気もない。

「伊澄ちゃーん、ケガしたっ!」

ジャージ姿の聖也とヒノケンが駆け込んできた。

「…どこ??」

「ここ!」

ヒノケンは自分の擦りむいたひざを指した。

「…消毒するね、ちょっと染みるけど」