「そのつもりだよ。高校の時から、ずっと目指してたんだから」

その気持ちに偽りはなかった。疲れることもあるけれど、辞めたいとは思わない。

「それならいいけどさ、俺の場合…」

「理解できない」

「…………」

伊澄にあっさり切られてしまい、笹木は黙ってしまった。

「法学部行った友達とかにさ、司法試験何度も落ちて挫折した人の話とか聞いたことあるし」

「…………」

「圭吾に、そんなんになってほしくないよ」

伊澄は懇願するように笹木を見つめた。

「俺…」

何か言おうとした笹木の言葉を伊澄は遮った。

「もう27なんだよ?突飛すぎるよ」

「…俺のこと、嫌になった?」

「嫌とゆうか……」

別に、人として嫌いになった訳ではない。しかし……こんな男とはやっていけない……。将来的に、不安定すぎる。

「…別れたい?」

伊澄は黙って頷いた。

「そう…」


そのまま車から降りた伊澄を笹木は引き止めなかった。