「えっ、何で泣いてんの?!」

ちぃはベッドに横たわったまま、制服の袖で涙を拭いた。

「ええっと…ティッシュ」

ヒノケンは慌てて、自分のポケットの中を探った。

その拍子で、ヒノケンのケータイが床に落ちた。

「おっと……ティッシュねぇな…」

ヒノケンがケータイを拾う姿を見つめて、呟いた。

「……ジャジャ様」


「ああ、これ?」

ヒノケンのストラップは、ちぃの好きなアニメの…ジャジャというキャラクターキーホルダーだ。

合宿先に向かう途中のパーキングエリアのガチャガチャでちぃが取った景品だが、"好きなキャラじゃないから"とヒノケンに譲ったのだ。

「どーせならストラップとかがいいっつったら、ちぃがたまたま持ってた糸で結びつけたんだよな」

「うん…まだつけてると思わなかった」


「あー結構頑丈なんだなこれ」

ヒノケンは爪でキーホルダーにくくりついた糸を引っ張った。