ヒノケンがそう復唱して顔を上げると、窓際に座っている男子の手元に目がいった。

「返して」

ヒノケンはその男子からノートを取り上げた。

男子も抵抗しなかった。


「ほら…お前の、取り返したから」

ヒノケンは横たわるちぃにノートを見せて、しっかり持たせた。

「お前だけのもんだから…しっかり持ってろ」


ちぃはこくっと頷いてノートをぎゅっと抱きしめた。

「どうしたの?!」

少し遅れて、先程の男子に呼ばれた伊澄が駆けつけた。

「伊澄ちゃん」

伊澄の登場に、少しヒノケンはホッとした。

「呼吸の様子がおかしくて…」

「過呼吸?」

伊澄はちぃの顔を覗き込んだ。

「多分そう。この処置でいいよな?」

「そうね。火野くんがしたの?」

「おう」

ヒノケンの意外にちゃんとした処置に、伊澄は驚いた。

「よくできたね。とりあえず…保健室連れて行こうか」

「了解」

ヒノケンはちぃをおぶって、伊澄と共に教室から出ていった。