牛朗と織女と二人の子供と白い老牛は明るく楽しい日々を過ごしていました。

それは、それは楽しい日々でした、牛朗と織女と子供達と白い老牛たちの毎日は
いつも笑顔に包まれていました。

しかし、その楽しい日々も終わりの時が近づいてきてしまったのです。

いつしか、仙女の織女がこともあろうに、人間の牛郎の妻となったとの噂が
天界の天帝に知れる事となってしまったのです。

「人間が天界の者と結婚するなど許されぬことだ!」

天帝は大変激怒して、直属の家来に織女を天界に連れ戻すよう言い渡したのです。

天帝の命を受けた家来は、牛朗たちの元に突然現れて牛朗と子供達の目の前で織女を連れ去ってしまいました。

牛の神様である白い老牛も天帝の直属の家来の力には叶いませんでした。

牛朗と子供達は、天を見上げて嘆き悲しみました。

天界に連れ去られた織女を人間である牛朗達は追いかける事はできないからです。

嘆き悲しむ牛朗と子供達に、白い老牛が言いました。

「私は、牛にされたとはいえ元は天界の者、私の皮を剥いでその皮を身につければ
天界への境界線である天の川までは行くことができる。牛朗よ、私の皮を剥ぎなさい」


牛朗は驚きました。家族として共に生活してきた白い老牛の皮を剥ぐことなどできるわけがありません。

牛朗は白い老牛の申し出を断りました。

すると、白い老牛は牛朗を見つめ強い口調で言いました。

「私は、お前に命を救われた。そしてお前は私を家族にしてくれた。

その家族を守るためならば、私はどんなことでもしよう」

白い老牛は牛朗にそう言うと、崖に向かって走り出しました。