織女と一緒に暮らせることになった牛朗は、一生懸命に働きました。

織女にも常に明るく優しく接して、織女の笑顔を絶やさないように
いつも心がけていました。

時が経ち、いつしか織女の心にも牛朗の善良な優しさに恋する気持ちが生まれてきました。

しかし、心優しい牛朗は織女との楽しい生活を続けていくうちに、織女の羽衣を隠している罪の深さに悩み苦しんでいたのです。

そして、とうとう罪の重さに耐え切れなくなり、織女に隠していた羽衣を差し出し
全てを打ち明け泣きながら織女に許しを請いました。

織女は、泣きながら許しを請う牛朗から黙って羽衣を受け取りました・・・


牛朗は、これで織女との楽しい日々が終わってしまう事を覚悟しました。

すると織女は、牛朗から受け取った大切な羽衣を、突然釜戸の火の中に
投げ込んでしまいました!

牛朗は驚き、慌てて燃え上がる羽衣を取り出そうとしました。

しかし、織女は牛朗を制止して、優しく静かに言いました。

「あなたが、羽衣を隠していたのは知っていました。」

「そのせいで貴方が苦しんでいた事も・・・」

「しかし、私も羽衣の事を貴方に問いただす事が、どうしてもできませんでした。」

「それは、羽衣の事を貴方に聞くと、ここでの楽しい暮らしが終わってしまうと
思ったからなのです。」

「それでも、いつか貴方は私に真実を打ち明けてくれると信じて待っていました、
やはり、貴方は嘘の付けない誠実な優しい人・・・」

燃えてゆく羽衣を見つめながら織女は、牛朗に震える声で言いました。

「羽衣が燃えて、私はもう二度と天界には帰れません、だから・・・」

牛朗は織女の声をさえぎるように大きな声で言いました。

「どうか、私の妻になっていつまでも私と一緒にいてください!」

織女は顔を上げ、笑顔で牛朗に答えました。

「はい、いつまでも貴方と一緒にいます」

牛朗と織女は、お互い駆け寄り抱きしめあいました。

その二人の姿を、嬉しそうに白い老牛が優しい目で見つめていました。

それから、牛朗と織女は結婚し男の子と女の子の子供も授かりました。たとえ貧しくても牛朗はとても幸せでした。