亜紀、チョコ出して! 最重要事項!


そんな念を視線にこめてみるけど、もちろん通じるはずもなく。

だからかわりに他の二人へと視線を向ければ、にっこり笑った知世がぽんと亜紀の背中を押した。


たたらを踏むように前へ出た亜紀が、あわあわと鞄の中からチョコレートを取り出す。

そしてあたしを見て、後ろを振り返って知世と晴香を確認して、ようやく包みを里村葉の前へと差し出した。


「あ、あの、これ、バレンタインの……」


緊張のせいか、その後の言葉はもごもごと口の中に消えた。

でも亜紀の言いたいことは伝わったのか、里村葉は「俺に?」と言ってにっこりと笑った。