「……あのさ、あたしマジで帰りたいんだけど」

「いいじゃん、ピンを受け取らなきゃいい話でしょ?」


昼休みに亜紀から一緒に来てと頼まれた時、あたしはもちろん断った。

ちゃんとヘアピンの事情や里村葉との遭遇についても話して、その上で行きたくないって言ったんだよ。

だけど亜紀にあっさりと却下され、ついでに面白がった知世と晴香までもがついてきて、あたしは完全に逃げ場を失った。


だって両脇からがっちりホールドされてたんだもん。まさに連行の図。


「知世も晴香もデートなんでしょ? 時間いいの?」

「店長さんの顔を見るくらい平気よぉ」

「わたしはまだ時間に余裕あるから。やっぱり美形って言われたら興味があるじゃない?」


くすくすと悪戯っぽく笑う二人は可愛いんだけど、今のあたしには悪魔の微笑みにしか見えないわ。

うう、悪あがきも失敗に終わったみたい。無念。