「コレ、すでにチョコレートじゃないよねぇ」


知世が机の上の黒いカタマリをつっつく。

二人が友チョコとして持ってきた物は、本命チョコの残りで作ったらしいんだけど。

何かね、同じ材料とレシピを使っているのに天と地ほどの差があるのよね。


つまり美味しそうなのと不味そうなの。

ていうか、食べられる物と食べられない物。


あたしは知世の指先でころころと転がってる物体を眺めながらため息をついた。


「チョコを溶かす時、火が強すぎたんじゃない? 油が分離してるよ、これ」

「あ、ホントだぁ。それにちょっと焦げくさいかも」

「亜紀はせっかちだから。きっと人より慎重に作るくらいで丁度いいのよ」

「わーん、自分でもわかってるんだからトドメ刺さないでよー!」


そんなことをわめきながら、亜紀が失敗チョコを包みで覆い隠す。

まあ、これを人に食べさせるなんてできないわよね……。