人波の向こう側に、背の高い里村葉の後ろ姿が見える。隣にはミナトさん。

少し身をかがめてミナトさんに何か話しかけてるみたい。あ、小突かれた。


それを見て、あたしは小さく噴き出した。

ホント、大人なのか子供なのかよくわかんない人。


ふと視線を落とした手の中には、優しい色の名刺。

一番下にはお店の住所が書いてあるけど、きっとあたしがここに行くことはないと思う。

そうすればきっと二度と会うこともない。今回の遭遇だって、かなりの確立だったんだろうし。


これで元通り。智彦の思い出は、あの日この大通りで落としたまま。

あとは時間が解決してくれるのを待つしかない。あたしが智彦を忘れられるまで。


あーあ。何だか疲れちゃったし、やっぱり今日は家に帰ろう。





+++++