…………この人の笑顔、反則だ。

大人なのに、まるで子供みたいに笑う。こんな高校生の言葉ひとつくらいで。


ああ、やっぱりこの人の目は真っ直ぐで強くて……少し、怖い。


あたしみたいに色んなことを誤魔化して、適当につじつまを合わせて笑ってるような、そんな瞳の色じゃない。

何だかその瞳に引きずられそうになって、あたしはそれを誤魔化すように里村葉へと背中を向けた。


「じゃ、じゃあね。ホントに気が向いたら、だから!」

「わかってるよ、あまり期待しないで待つことにする」


そんな苦笑めいた声が背中にぶつかる。

あたしはその大人らしい低い声から逃げるようにして足を速めた。


ちょっと苦手だ、あの人。

里村葉。


しかもあたし、謝らずに来ちゃったし。

それが何となく気になって、ちらりと少しだけ後ろを振り返った。