ぶつぶつと文句を言いながら持っていたコートを相手に押し付けて、どうやら友達らしいその人はくるりとあたしの方を振り返った。

美形な友人とは対照的な、ホントに平凡な感じの人。

いわゆる中肉中背で、小作りな顔立ちはどこかリスとかハムスターを連想させる。


だけど、ふにゃん、と笑った顔が妙に可愛くて、あたしはいつの間にか全身から緊張を解いていた。


「ごめんなー、ヨウが迷惑かけたみたいで」

「ミナト、お前人聞きの悪いことを……」


ヨウ、って名前らしい男が何かを言いかけたとたん、ミナトと呼ばれた方は丸い目を三角にしてヨウをにらんだ。


「うっさい。女の子を怒鳴りつけるなんて、それだけで万死に値する!」

「万死に値するって……ミナト、最近なにか変な本でも読んだか?」

「どうでもいいよ、そんなこと!」


そう叫んだミナトさんの耳が赤い。

あ、これはホントに何か読んだな。時代小説とか、そっち系?


いや、それこそどうでもいいんだけど。そこのオトモダチ二人、人を放置してじゃれ合わないでくれる?