ゆっくりと深呼吸をして心を落ち着かせる。きっぱりと拒むために。

そしてぐっと力を込めて顔を上げた。


「これ、あたしが持ってるわけにはいかないんで受け取れません」

「いや、俺が持ってるのもおかしいだろ」

「じゃあ捨てちゃってください」


そう言って差し出された紙袋を押し返すと、彼はすっきりとした眉をしかめて睨むような表情になった。


「簡単に捨てるって言うな。これ、たぶん手作りの一点物だぜ。たとえ小さなヘアピンひとつでも、作った方にすれば自分の子供みたいなもんだ。だからそんな風にどうでもいい様な扱い方するなよ」

「そんなのあたしの自由でしょ。あたしはそれを持ってたくないの。それが悪いって言うなら、誰か大切にしてくれる人にあげてよ」


急にキレだした男にむっとして、あたしも強い口調で言い返す。

そしたら彼はイライラと髪をかき回して、行儀悪く小さく舌打ちした。