「すみません。お気持ちは嬉しいんですけど、そのピンは……」

「この間も自分のじゃないって言ってたな」


拒否しようとしたあたしの言葉をさえぎって、彼はそう言いながら顔を覗きこんできた。真正面から目が合う。


その黒い瞳に映るあたし。あれ、なんで泣きそうな顔してるんだろう。


「ワケあり?」


友達とは違う大人の落ち着いた声に、あたしはうつむいて首を振った。大きく何度も。


だってそのピンはもうあたしの物じゃない。

智彦とのつながりをなくしたあたしが、そんな物を持ってたってしょうがないもん。


未練がましく、あたしばっかりが苦しいなんて、そんなのは嫌。

ごめんね、死神サマ。あたしにはやっぱり『ありのまま』なんて難しいみたい。