さりげなく視線を外して駅の方へと向き直る。

何しろ今は一月、こんな所でぼんやりしてたら凍えてしまう。さあ、さっさと家帰ろう。

なのに一歩を踏み出した瞬間、オッサンは慌てたように机から身を乗り出して、がっちりとあたしの手首を掴んできた。


「いやいやいや、無視しないでくださいお嬢さん」

「スミマセン間に合ってます」

「何が!? いやちょっと、別にナンパじゃありませんよ!」

「ナンパの方がまだマシだから。ていうか放してよ、大声出すわよ」


掴まれた方の腕を振ってみる。外れない。むしろ力強くなってるかも。

あたしは思わず振り返ってオッサンの顔をにらみつけた。


「もう、何なの!? いい加減にしてよ!」

「落ち着いてください、すぐにすみますから。ちょっとね、あなたの上に面白い『相』が見えたというだけなんです」

「はあ? 占いの押し売りなんていらないんだけど。どうせ占ってもらうなら、もっと信用できる人知ってるし」

「そう言わず、お代はいりませんから少しだけ聞いてください」


なに言ってんの、コイツ。