「自分らしさをなくしてはいけない、ということかな。君は山崎君のために頑張って、でも頑張りすぎて、たくさんのことを我慢しすぎていなかった?」


……そう、かもしれない。


「初めて会った時の君と、今の君。ずいぶん変わったように僕は感じるよ」


よく考えてみれば、今のあたしは智彦の好みだけで作られてる。

流行りの髪型も、小悪魔メイクも、私服やアクセサリーで飾った制服も。


何でも合わせて、何でも聞いて。だから。

別れを告げられても、こうやって受け入れることしかできなかった。


だけど本当は別れたくなんかなかったんだよ。

嫌だって、叫びたかったんだよ。


「嫌われたく、なかったの」

「うん」

「智彦が好きでいてくれるなら、それで良かったの」

「……うん」


またうっかり泣きそうになって、あたしは慌てて顔をうつむける。

だけど相槌を打つ死神サマの声がいつもと同じだから、なんとなく肩の力が抜けて言葉を続けることができた。

失恋と真正面から向き合う、その言葉を。


「でも、それだけじゃダメだったんだね」