「それで? 君が大泣きするなんて何があったの」


ほら、こうやって気に掛けてくれる。

周りを気にしてか、小さな声でそう聞いてきた死神サマに、あたしは小さく頷いた。


「……ふられたの」

「山崎君だっけ」

「そう、好きな子ができたんだってさ。うちの学校でいちばん可愛い子」


できる限り軽く言ったつもりなんだけど、声が少しだけ震えちゃった。あ、ダメだ。また泣きそう。

と思ったら頭の上に、ぽん、と死神サマの手が降ってきた。


「はい、もう泣かない。それ以上泣くと、パンダどころか今度は黒い涙が出てくるよ」

「うっさい。もー、あのパンダは忘れてよ」


確かに会って早々、駅のトイレに駆け込むハメになったけど!

あれはヤバかった。メイクはドロドロ、巻いてた髪はボッサボサ。女どころか人間捨ててる顔だったもん。


あっという間に涙が引っ込んで、かわりに笑いが込み上げてきた。あれよりひどい顔なんて嫌だわ、うん。

ふふ、と小さく笑う。だけどそれに紛れ込むようにして、やっぱりため息が落ちた。