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「ありがとね、メイちゃん」


帰り際、湊さんはこっそりとあたしにそう言った。

ドーナツ屋さんを出て、里村さんが掛かってきた携帯を片手に少し離れた時だった。


「あたし、何もしてませんけど」


むしろ迷惑かけてる自覚が。ドーナツもおごってもらっちゃったし。

だけど湊さんは悪戯っぽい笑顔で大きく首を振った。


「俺たちからするとね、君は偉業を成し遂げてくれたんだよ」


あたしは意味がわからなくて首をかしげたけど、湊さんはそれ以上何も言わなかった。


あたしがその事情を知るのは、もう少し先のこと。




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