「まあ、そういうことなら浮気疑惑は完全にあたしの誤解だったわけね。一応謝っとくわ、ごめんなさい」

「……君ね、本気でそう思ってる?」

「思ってる思ってる。でもそれとあんたの胡散臭さは別、みたいな?」

「俺、そこまで言われるようなことしたか? っていうか、誤解が解けても結局はコレ!?」


ぶーぶー文句を垂れてる里村葉に、もう寂しさのかけらは見当たらない。

子供みたいな表情でむくれながら、ヤケのようにドーナツを食べ始める。

だけど隣の湊さんはにこにこと楽しそうに笑ってた。


「ま、お前が女たらしなのは、まぎれもない事実だもんな~」

「待て待て待て、俺は何もしてないだろうが」

「何もしてないけど、あなた八方美人なんだもん。だから女の子が勘違いしちゃうのよ」

「……、…………」


湊さんと千夏さんの二人がかりでヘコまされて、里村葉は何か言いたそうに口をパクパクさせた。

でも結局何も言い返さずにがっくりと肩を落とす。自覚はあったわけね?


いつもならそんな里村葉を見て「最低」とか思ってたのに、今のあたしは何となくほっとしてしまった。