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……思い出したくないのに。忘れたいのに。

あの変なオッサンのせいで、また涙が止まらなくなっちゃったじゃない。


人通りの多い道をうつむいて歩きながら、あたしは手の甲でぐっと目元をぬぐった。

こんな街中で泣いてるなんて、あたし馬鹿みたい。

心の中ではそう思ってるのに、でも止まらないんだ。悲しいからっていうのもあるし、怒ってるからっていうのもあるけど。


だけど本当の本当は、悔しいんだ。


あたしにとっては智彦がすべてだったのに、智彦にとってはそうじゃなかった。

ちょっと可愛い女の子を見つけたら、あっさり捨てられる程度のもの。それがあたしの価値。