「メイ?」

「呼び捨てにすんな!」


反射的に言い返して顔を上げた。上げちゃったよ、あたしの馬鹿!

見上げた先にいたのは、やっぱり想像していた通りの人だった。


涼しげな顔立ちだけど、目元にぱっと華のあるキレイな顔。

つやつや光る真っ黒な瞳が相変わらず強くて、わけもなくドキっとする。

グレーのパーカーにブラックジーンズっていうありふれた格好なのに、びっくりするくらい華がある男。


――里村葉。


「……見なかったことにしていいかな」

「え、無視? ていうか存在否定? ひどくないか、それ!」


おっと、考えてることが思わず口から出ちゃったわ。

食って掛かってくる里村葉を前に、あたしはこっそりとため息をついた。