広いフロアを突っ切ろうとしたら、途中の大きな柱の影から突然人が出てきて、避ける間もなく肩がぶつかった。


「「あ、ごめんなさい」」


あたしとその人の声がきれいに混ざる。

その瞬間、あたしは思わずその場で固まった。


頭上から降ってきた低い声。

柔らかい響きの、どこか耳に甘いその声にあたしは聞き覚えがあった。

ていうか、本当は全力で記憶から抹消したいんだけど。


……あたし、今、動揺してます。

智彦に無理矢理キスされた時よりもヤバいです。

だって顔上げるのが怖いんだもん!


二度あることは三度あるなんて言葉、誰が考えたわけ!?