「別に今さら振られたことを怒ってなんかないわよ。別れ話なんてその辺にゴロゴロしてるんだし。ただ、笑いながら女を捨てるあんたのやり方は最低だった。それだけよ」


ようやく意味が伝わったのか、智彦はうろたえたように視線を泳がせた。


「メイはもう、俺のこと嫌になったのか……?」

「嫌になったんじゃなくてケジメをつけたいの。あたしはもう傷つきたくないし、我慢もしたくないから」


……嫌になったのか、なんて普通聞く?

っていうか、嫌われないとでも思ってたわけ?


もしかして智彦は今まで誰かに拒まれたことがなかったのかな。


見た目もよくて、性格も人懐っこいから、本気で智彦を嫌う人は少ない。

だから彼女も簡単にできるし、飽きて別れてもすぐに次の子が寄ってくる。

そういえばあたしと付き合ってたときも、平気で元カノと話してたっけ。


そうやって人に囲まれることが当たり前になってたから、自分が拒絶されるなんてこと考えもしなかったのかもね。


そう思ったら何だかおかしくなってきて、あたしはくすりと小さく笑った。