つかまれた腕を外そうと身をよじる。外れなかった。

手は使えない。力ではかなわない。


大きく首を振った。唇が離れる。

早く拒絶の言葉を、ダメだって言わないと。

でも頭が回らなくて――。


「! いっ……てえ!」


気がついたら力いっぱい智彦の足を踏みつけてた。しかもかかとで。

途端、つかんでた腕を放して智彦がうずくまる。

たぶん相当痛い。思いっきり指先を踏み抜いたからね。狙ったわけじゃないけど。