あまりの近さに驚いて、あたしは声も出なかった。

とっさに離れようとしたけど、身体がすくんでうまく動かない。

よろめいたせいでバランスが崩れて、背中が扉にぶつかる。


「な、なに……?」


動揺して声がかすれた。

でも智彦は何も言わない。かわりに手が伸びてくる。

二の腕をつかまれた。強い力だった。