山崎智彦君が加藤美紅さんに振られたらしい。


そんな噂が流れたのは、学校から三年生の姿が消えて、最後の実力テストも終わった三月初旬のことだった。


平々凡々な成績のあたしは、追試の恐怖から逃れつつも特別嬉しい成績でもなく、それこそ平和でのどかな日々を送っていたわけで。

だから知世からその噂を聞いた時も「へえ~」なんて他人事のようにうなずいただけだった。


「昨日の放課後のことらしいけど、すでにうちの学年はみんな知ってそうな勢いね~」


ぽかぽかと眠気を誘うような昼休み。

購買でパンと一緒に噂話まで仕入れてきた知世は、いつも通りののんきな口調でそう話を締めくくった。