……なんて、実はサンクチュアリ方面に戻りたくないってのが本音。

ちらりと振り返ってみるけど、ここからじゃもうあの店は見えない。

それにほっとしてる自分がちょっとイヤだったり。


どれだけ里村葉のことが苦手なんだ、って話よね。

あー、あとで亜紀たちにメールできちんと謝っておかなきゃ。


でもその前に深見先輩とおしゃべりして和みたいよ、うん。


「よし、今日はやっぱりショコラってことでケーキ屋さんにしよ?」

「いいよ。今だとバレンタイン限定のケーキもあるみたいだし」

「……ホント詳しいね、深見先輩」

「友人にはいつも呆れられるんだけどね」


そう言って苦笑した深見先輩は、ふと視線を背後の方へと向けた。