置いていかれる人間がどんなに辛いかなんて、きっと考えたこともないんだ。

智彦も里村葉も、置いていく側の人間だから。

放っておいても人が近づいてきて、自分から手を伸ばす必要がないから。


心ごと振り払われる怖さを、あの人たちはきっと知らない。


悔しい。こんなの不公平だ。


息が切れて足を止める。

涙は出ないけど、目の奥が熱くて痛かった。


それをこらえるために唇をかんでいたら、ふいに背後から聞き慣れた声があたしを呼んだ。


「何してるの、メイ」


耳に心地良い落ち着いた声。

ぱっと顔を上げて振り返ったら、そこにはいつも通りの根暗スタイルがあった。