「……家の近所にこういう店があったら通ったのに」


気を抜いてたら思わず本音がこぼれた。

うっわ、あたし何で里村葉を喜ばせるようなこと言ってんの。

や、別にいいんだけどさ。でも何か悔しいのよ、この人を褒めるのが!


はっとして恐る恐る隣を見る。

だけど里村葉はさっきみたいな営業スマイルも、ましてや得意げな顔もしてなかった。


その表情は確かに笑顔。

なのに真っ黒な瞳は、じわりとにじむように揺れて、ここではない遠いどこかを映してるみたいだった。