オレはそっと。
きわめてそっと声をかける。
「リョウ?」
リョウは肩を揺らす。
そしてゆっくりと振り返る。
オレの顔を見上げて、オレを認めて。
小さく息を吐く。
「響くん」
「おまえなにしとん、こんなとこで」
「うん」
と、それはなんだか煮え切らない返事。
オレは足を進めてそのパソコンのモニタを覗き込む。
目に入るのはグリーン。
グラウンドや、サッカーグラウンド。
映っているのは見慣れたユニフォーム。
ちらりと端に映るオレ。
「これ、予選の試合か?」
オレの問いにリョウはうなずいた。
「放送部の友達に全試合撮ってもらったの。
それ、DVDに焼いてもらって」
そういえば机の上には何枚かのディスクが転がってる。
それと一緒に並ぶのは、大学ノート。
綺麗とは言えない走り書き。
リョウは試合を見直してデータを撮っていたんだった。