それは。

 と、カツリョウは少し考えてからつぶやく。


「親父さんよりおふくろさんを取った決意と変わらないのか?」


「そやな」


 オレはおとうちゃんの顔を思い出す。


「おとうちゃんはちやほやしてくれる女がおるから平気やねん。

 けどおかあちゃんはあかん。

 もてるけど、オレのことが好きやから。

 ほかのおっさんらよりも、オレのことが好きやから。

 せやからオレがおれへんなんだらあかんねん」


「おまえが好きだから」


「あの人はおとうちゃんのことも好きやけど、オレのことがめっちゃかわいいねん。

 せやからオレがおとうちゃんとおる言うたら別居もなかったやろ」


「責任重大だな」


「でも、たまにはおとうちゃんも痛い目みたらええねん」


 そう。

 ちゃらちゃらしとるおとうちゃんがあかんねん。

 オレかてちゃらちゃらしとったけど、子供やし。

 そもそも独身やし。

 なんの責任もないからええねん。

 けど。

 おとうちゃんは違うからな。


「厳しいんだな」


「オレは厳しいよ、サッカーに関しても意外にまじめ」


「だとありがたいよ」


「まあ見とけや」


 カツリョウはまたここでため息をつく。

 ほんでオレの頭をまたなでて歩いていく。


「心配性やな」


 オレはつぶやく。
 
 その瞬間、周りにいたクラスメイトがちょっと固まった。