キーパーは動けなかった。
オレのボールの弾道だけを目で追っていた。
T校でどんだけ絞られてきたと思ってんねん。
全国常連校。
そこのエース張ってんねんぞ。
練習量かて半端ない。
実力かて、伊達やない。
「西、回して」
ついさっきまで隣にいたはずのリョウがキーパーに叫んだ。
すでに身体は動き出している。
さっさと責めに向かうて。
切り替えの早い女や。
「くらぁ、行くぞ」
オレはそう言ってリョウを追う。
キーパーの西からのボールはすでにリョウを経由した。
そして小柴の足元にある。
その小柴はオレの突進に少々ビビってるようす。
ってか、なんでオレにビビんねん。
「オレ無理、パス」
小柴はそういうと文字通りリョウにパスを出す。
なんでやねん。
これがこのチームのエースか。
なんやら力がぬけるわ。
「小柴くん後でロード増やすよ」
リョウはそう言ってボールを受ける。
嫌な女やな、あいかわらず。