「塩入、パス出せ、おらぁっ!」
オレは叫んでからセンターに飛び出す。
「サイドよりセンター攻撃が得意」
隣でリョウの声がする。
「オレのデータ収集は完璧、てか?」
「癖は直さないとね」
「嫌な女やな」
「嫌とえげつないとどっちが上級?」
「どっちもや」
オレは走るスピードを上げる。
さすがにリョウを振り切って、塩入のパスを受ける。
なかなかコントロールのええ男や。
「おっしゃ、ほんならセンターから責めよか」
えげつない女の忠告なんて知らん。
そんなん聞きたないわ。
オレはオレのサッカーをやる。
「取ってみろ」
言うて左足で強くボールを蹴る。
あんま試合で出したことないけど、実は。
オレ中距離シュート得意やねん。
データにないやろ。
「さすが」
ゴールネットを揺らしてしばらくして。
後ろで声がする。
リョウやった。
「本領発揮、って感じ?」
「そんなとこやな」
オレは笑う。