「坂井、突っ込んで」


 そう言うたんはリョウ。

 女の声や。

 間違いない。

 そしてなんぼか遅れて坂井が動くのが見える。



 あかんね。

 遅い。

 そんなんやったらオレのボールは取れへんで。



 オレは余裕で坂井をクリアする。

 そして目標は右サイドバック。



 どんだけやねん。

 その人望。

 その実力。

 見せてもらおうやないの。



 オレはまっすぐリョウに向かった。

 それは回りにも伝わっているらしい。

 なんていうか。

 誰もオレのボールを取りに来ない。

 そう。

 リョウ意外誰もや。


「消極的やな、このチーム」


 オレはリョウに言う。

 すでに向かい合って至近距離。

 十分声は届く。


「能ある鷹が牙を隠してるのかも」


「かいかぶりやろ、それは」