ふぅ。



 と一息もらす。

 ふと隣にでかい影を感じ、視線を移すとカツリョウ。

 顧問らしくジャージ姿で立ってる。


「おまえ前半少し外れろよ」


 意外な言葉。


「何で?」


「こっからのがよく見えるだろう、あれが」


「観察しろて?」


「そう。あいつの動きをよく見て、それから当たれ」


 ごもっとも。

 なるほどな意見にオレはうなずく。


「じゃあ先発響は15分くらい外すから、そこは三上が入れ。

 塩入、小柴、準備はいいな?」


 カツリョウのでかい声に両チームキャプテンは手を上げる。


「ゲームスタートだ」


 そのカツリョウの言葉に笛が鳴る。

 笛を鳴らしたのはコーチの杉本。

 カツリョウより少し年上の生真面目そうな男。

 人望はカツリョウのほうがありそうな感じ。

 けど。

 ボールを見る目は悪くない。

 コーチは名前だけじゃないってか。