「かっこ悪いやんな」


 オレは自虐的に笑う。


 「けど、本気やねん。

  お前のこと、ちゃんと大事にしたいねん。

  あかんかな?」



 あかんことはないやろ?



 自分でそうツッコんでみた。

 なんやろ、勉強のし過ぎでオレ頭おかしくなってるんちゃうかな?

 ま、言うほど勉強もしてへんけど。



 何ぼほどか沈黙が続く。

 リョウにとって、オレの言葉は。

 オレの提案は。

 オレのおねだりは。

 それほど衝撃的だったんやろうか。




 ため息をついて。

 教科書のページを一枚めくって。

 やっぱりさっぱりわからん。

 そう思ったとき、リョウが口を開いた。



 「前にね」


 小さな声。

 言いづらそうな、そんな言い方だと思った。