「リョウ」
オレは声をかける。
「オレ、前から考えてたことあんねんけど」
それはいつ言うか。
タイミングをはかってたことやった。
いつか。
いつか、近いうち。
リョウに伝えておこうと思ってたこと。
「ちょっと、聞いて欲しいことあんねんやんか」
リョウは真顔になる。
よう見慣れた顔やった。
「あんな、遠まわしやったらきっとお前には通じひんと思うから直球で言うで?
それでも一応言葉を選んでることだけは、覚えておけや?」
コクン。
リョウは大きくうなずいた。
「部活さ、休みになるのって試験中だけやんか」
「うん」
「次の休みってたぶん、冬の予選終わりだと思うねん」
「そうかな、予選が終われば」
「勝っても一日くらいは休みあるやろうし、負けたら引退や」
「引退」
「言うてもオレの場合、進路決めてそこの練習に合流することになるやろけど」
「あ、そっか」
「うん、で、その休みなんやけど」
うん。
と、リョウはやっぱり真顔でうなずく。
オレが続けようとしてる言葉にまったく。
心当たりなんてないんや。