そう。

 オレの初恋は幼稚園や。


 「毎日先生に会いに行ってたわ」


 ははっと笑う。

 けど、リョウは困り顔。


 「どないしたん」


 「うん」


 「思いあたらへんのか?」


 「うん」


 そりゃまたどんだけのんきに健全に生きてきたんだか。

 ってか。

 一番不幸なのはさっぱり初恋をしてこうへんかったリョウと違う。



 今田夏日やん。



 ぷぷっと笑って「オレが初恋かぁ」とつぶやくと、リョウはきょとんとする。


 「なんやねん。

  違うんか?」


 「あ、ううん。

  そうなんだなぁって。

  そう思っただけ」


 「不服なんか?」


 「そんなこと」


 「初恋は叶わないから?」


 オレにしてはセンチメンタルなセリフ。

 けど。

 リョウが考えるのはこんな程度のことやろう。