「聞いてもいいか?」
その声にオレは顔を上げる。
「それほど、あいつのどこを?」
思い出す。
それは簡単なこと。
「あなたと一緒です」
「一緒?」
「たぶん。
ほんまは弱虫で。
うじうじしてて。
男に混ざってサッカーなんかできるタイプと違くて。
おどおどしてる。
そういうあいつに出会ってしまったんです」
「出会って、しまった」
「ずっと気づけへんかった。
けどオレはそんなあいつに出会った。
そしたらもう、放ってはおけへんって思った。
オレがって。
オレが一緒におるって。
そんで。
あいつの15の時の衝撃と国立への思いを聞いて。
オレが国立に連れて行くからって、そう思って」
今田夏日は黙っていた。
「インハイは無残な結果で申し訳なかったと思ってます。
冬は、選手権は必ず全国行きます」
「その自信はどこから?」
「オレを筆頭とした、サッカー部全員から」
今田夏日は笑った。
そして。
ぬるくなり始めているコーヒーに手をつけた。